月: 2022年2月

外国人への融資と永住権

外国人ならびに外国人が代表者である法人に対する融資についてお話します。現在、私は国籍が中国人の会社の顧問をしています。入管関係の申請や、補助金、事業計画策定、資金調達などいろいろな会社や従業員のニーズに応えています。その中で日本の金融機関からの融資について、銀行やノンバンクなどに依頼するのですが、大抵の金融機関は、永住権がないと融資に対応してくれません。中には、永住権はなくとも、日本での生活が長く続いている場合は、状況を見て融資に応じてくれる銀行もあります。

 ただ、日本政策金融公庫や保証協会は、本人もしくは代表に永住権がなくとも、対応して頂けています。銀行は、プロパーでは永住権が必要ですが、保証協会の保証が付けば、永住権なくとも融資が可能です。そこで、日本で事業を行っている外国人は、概ね日本での営業をずっと続けていくつもりですので、時期がくれば永住権申請を行う方が多いのが事実です。中には永住権ではなく、帰化申請をされる人もいます。そうなれば国籍も日本となります。

 さて、その永住権ですが、外国人がどの様な条件を揃えれば取得することができるのでしょうか?それについて以下お話します。

 まず、永住権を取得すると他の在留資格とどこが違うのでしょうか?それは次の通りです。

①在留資格更新の手続きが不要になります。他の在留資格には1年、3年5年などの期限がありますが、永住権は無期限の在留資格のため、更新せずに日本に住むことができます。

②在留活動に制限がありません。他の就労在留資格には、その資格毎にできる仕事に制限があります。その資格以外の仕事をする折には、資格外活動ということになり制限がかかることになります。しかし、永住権を取得すると、一般の就労資格にはない職業(単純労働・肉体労働・水商売など)でも、他の法律に反しない限りは就労することが可能です。

③失業や離婚をしても在留資格を失うことはありません。一般の就労資格や身分系の日本人の配偶者と違って、失業や離婚により在留資格が失われることがありません。

次に、永住権取得の要件についてお話します。永住権についての許可・不許可については、法務大臣の自由裁量で決められることとされています。要件の明確な基準というものはありません。しかし、外国人の活動状況・在留状況・在留の必要性等を総合的にかつ公平に考慮して判断されるというもので、法務省から次のような永住権におけるガイドラインが公表されています。

①素行が善良であること

これは、法律を遵守して、日常生活において住民として社会から非難されることのない生活を営んでいることです。

②独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること

これは、日常生活において公共の負担になっておらず、かつ、その者の職業またはその者が有する資産等から将来において安定した生活が見込まれることです。

③その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

これは、次のア・イ・ウ・エのことです。

ア.原則として、引き続き10年以上日本に在留し、このうち就労資格または居住資格を持って5年以上在留していること(特例有)

イ.罰金刑や懲役刑を受けていないことや、納税義務等公的義務を履行していること

ウ.現在有している在留資格が最長の在留期間を持っていること(法律上は5年が最長の在留期間ですが、現時点では期間3年で許可されている場合、最長の在留期間として取扱われています)

エ.公衆衛生上の観点から有害をなるおそれがないこと

これは、具体的には、麻薬・大麻・覚せい剤等の慢性中毒患者等や感染症患者として公衆衛生上有害となるおそれがあるものとして取扱われるものでないということです。

このような要件を全て満たし、永住申請をする際に「身元保証人」を用意して申請ということになります。

そして、必要書類を揃えて出入国在留管理局に申請書を提出してからおよそ6ヶ月から10か月くらいの審査期間を経て永住権を取得することができるのです。

永住権を取得してやっと金融機関からプロパーの融資を受ける権利も取得するのですが、当然日本の会社と同様に事業内容や決算内容の審査があり、その審査をパスすることができて融資を受けるということになります。外国人が日本で融資を受けるのはこれほど大変なことなのです。

以上