月: 2022年4月

不動産特定共同事業法の電子取引業務について

不動産特定共同事業は、投資家より資金を集めて不動産に投資をし、その収益で投資家に分配する事業です。この投資家から資金を集めるときに、インターネットを通じて事業者と投資家が契約を締結することが可能にするのが、「電子取引業務」であります。いわゆる「クラウドファンディング」と呼ばれるものです。

この「電子取引業務」については、この2年間のコロナ禍において、キャンプファイアー・マクアケ・REDYFORなどのクラウドファンディングプラットフォーム会社での取引が急激に伸びていることからも分かる様に、世間一般に浸透しつつある様子が見受けられます。よって、不特業を行う場合にも、クラウドファンディングによって、顧客が便利に容易に投資できるようにしていくことが、ここからは必須となってくると思われます。

しかし、この電子取引業務を行うには、「顧客情報の流出」・「システムの障害」などの大きなリスクが潜んでおり、投資家の利益の保護を図るために必要な規程や体制が求められ、必要になってきます。以下、国土交通省から出されています「不動産特定共同法の電子取引業務ガイドライン」から、電子取引業務を実施するに当り、押さえなければならないポイントを述べたいと思います。

1.基本方針・取扱規程等の整備

①基本方針には、不特事業者の名称、電子情報処理組織の管理に関する質問・苦情処理の窓口、電子情報処理組織の安全管理に関する宣言、基本方針の継続的改善の宣言、関係法令等遵守の宣言が必要。

②取扱規程には、情報の取得、利用、保存、提供、削除、廃棄等の段階ごとに定めが必要。

2.組織体制の整備

①管理責任者の設置

②運用の記録・確認

③運用状況確認のための情報台帳の整備

④社内の報告連絡体制の整備

3.人的体制の整備

①非開示契約の締結

②教育・訓練

③責任者には十分な知識・経験が必要

4.物理的・技術的管理体制の整備

情報セキュリティの確保を行うために、物理的・技術的な施策を実施し、定期的な見直しが必要。

5.システム障害時への対応

①適切な人員配置

②バックアップシステム、バックアップ体制

③想定した訓練を定期的に行う

④障害発生時に状況記録と再発防止策

⑤一定のシステム障害発生時の当局への報告

6.外部委託先管理

外部委託先に電子情報処理組織の管理を委託する場合、外部委託先に対し必要かつ適切な監督をする必要がある。

①外部委託先の選定の際の基準を決める

②委託契約締結時、外部委託先との役割分担・責任分担、監査権限、再委託手続き、サービス水準、委託先のデータ漏洩、盗用、改ざん、目的外使用禁止を定める

③外部委託先の役職員の遵守すべきルールやセキュリティ要件を契約書に明記

④システムの構築、保守、運用等に係る適切なリスク管理が必要

⑤外部委託先に対する定期的なモニタリング

⑥外部委託先による顧客等に関する情報へのアクセス制限

⑦再委託の条件を定める。

⑧外部委託先の漏洩事故等の発生時、外部委託先の対応および委託元への報告を定める。

7.顧客財産への被害防止に対する対策

8.顧客等による誤操作など操作ミスに対する対策

以上のように多方面での規程整備や対策を講じる必要があり、そのために人的・組織的・技術的対策へのしっかりとした準備が必要であることが分かります。この電子取引への投資は、将来のクラウドファンディングを通じての資金調達、投資家の囲い込み等のメリットを考えると、しっかりと万全に行っておく必要があると思います。