これから銀行はどうあるべきか?

これから銀行はどうあるべきか?

令和4年が始まりました。昨年10月に還暦になり、これからアウトプットをどんどん行うことを心に決めました。自分の思ったこと、考えていることをストレートに出していこうと思います。そして色々な問題提起をさせてもらいたいと思っています。

さて、銀行から融資を受けるという分野は、学校で教えてくれることはありません。また、社会人となっても、会社の経理部門や財務部門に配属されるか、自分で事業を営むか、または銀行やノンバンクに勤務し、事業者に対して融資審査をして融資実行する立場にないと、中々お金を頻繁に借入したり、貸付したりすることはないでしょう。もちろん、個人的にも住宅を購入するときに、住宅ローンを借入することはあるでしょうが、一生に一回のことであろうし、その審査は、ネットで申し込みし、システム的に点数をはじき、審査完了することもできるようなステレオタイプ的なものです。

しかし、事業者への融資の世界は、そう単純なものではありません。私は20年間銀行員をしていましたが、銀行の考え方は世間一般の考え方とは少しかけ離れた思考回路の中にいるような感じがしました。「世間の常識は銀行の非常識」とも言われることもあります。事業者が良しとすることが、銀行から見るとダメなことになるのです。もっと言うと銀行には一般のビジネスの世界とは何か違う商習慣が流れているのです。そして、これは私が銀行を離れて16年経過し、現在も色々な銀行員と話をする機会がありますが、その根底に流れる変なものは、未だに何も全く変わっていないと思います。また、そこで変に思うのは、どの銀行員と話をしても、ほとんどの話の内容が同じであるということです。それぞれの銀行は、違う企業であるのでその考え方はそれぞれ違うのが普通だと思うのですが、全ての銀行員の話のなかの考え方が一緒なのです。ゆえに、その「変な考え方」は業界全体に流れているものであると思います。

それでは、銀行業界に流れている「変な考え方」とはいったいどこから来るのでしょうか。私は、「偏見」・「自己防衛」・「傲慢」であるように思います。自分の考え方以外は間違っているという考え方です。産業界では、一番大事なのは、消費者、お客様のニーズや考え方を知ることが大切です。そして、そのニーズに応えることが売り上げに繋がっていくのです。お客様のニーズに合わせて自分が変化していかなければなりません。そうしなければ、どんな大企業でも厳しい生存競争に打ち勝っていけません。しかし、銀行の考え方は、銀行が考えた事業形態や事業運営が正しく、それ以外の組織形態や運営形態をとっている事業は理解せず、一方的に銀行の考え方を押し付けることが一般的です。その上その違う考え方を採用して間違えると銀行内部でマイナスになるという自己防衛が始まるのです。また、意識の根底には、いまだに「金を貸してやっている」という傲慢な考えが消えていないということです。そして、この考え方は、私が銀行に入った37年前からなにも変わっていないように見えます。

産業界が、お客様のニーズの変化に合わせてどんどん変化していくのですが、銀行はその変化について行ってないのです。ここが、日本の経済の停滞を招いている大きな原因になっているのかもしれません。しかし、そのような時代遅れの銀行でも、現在生き残っているのはなぜでしょう?私が考えるには、それは銀行が一般の企業と違った次のような特殊性を持っているからだと思います。その特殊性は

①銀行が唯一「預金」と「融資」の両方の機能を持っていること

②銀行業が金融庁の許認可業であり、そのことが参入障壁を高くしていること

③日本の中小企業の資金調達の手段が銀行融資に大きく依存していること

④アメリカでは一般的なエンジェルといったベンチャー投資家が日本にはいないこと

⑤生え抜きの経営者しかいないこと。(最近はⅯ&Aで生え抜き以外の経営者もでてきたが、結局これまで銀行にいた人間で考え方は大きく変化しない)

⑥なによりも失敗を恐れるマイナス思考の風土

などであります。

要するに、企業にとって生命維持にどうしても必要な「資金調達」を、許認可という壁に守られて独占的に行っている銀行が、自分の都合に合わせて融資の考え方を作り、時代の先を走っている日本の産業界がその考え方に合わさないと融資を受けられないという不幸なことが続いているということです。そして、それをいまだに業界横並びでずっと維持し続けているということなのです。これでは、日本の産業は育たないでしょう。日本にGAFAみたいな大きなゲームチェンジを仕掛ける会社がないのは、日本のこの金融システムが原因だといっても過言ではないでしょう。

では、これから銀行はどうすれば良いのでしょうか?

それは、去年の大河ドラマ「青天を衝け」の主人公、渋沢栄一にあると思います。渋沢栄一が、今の日本の資本主義を作ったと言われています。そして、銀行も渋沢栄一が初めて日本に作ったのです。そのときどの様な考え方で銀行経営を行ったのかは分かりませんが、ひとつ言えるのは、今の銀行の経営者と全く違っているのは、渋沢栄一は、実業界で色々な会社を経営していたということです。よって、産業界のニーズが肌感覚で分かっている人物が銀行経営を行っており、少なくとも産業界との考え方とは、今のようにズレていない銀行であったのではないでしょうか。

おそらく、大正、昭和の戦争直後までは、銀行というのは今の銀行とは違った感じではなかったのではないかと思います。その理由は、私が大学時代に読んだ、高杉良の「小説日本興業銀行」という本の中にあります。興銀が戦後の日本経済を復興させるために自らリスクを取って民間企業と一緒になってプロジェクトを進めていく様子がまざまざと描かれています。その本を読んで、銀行とはすごくスケールの大きい仕事をするのだなと思ったことを覚えています。今の銀行は、そのような日本経済を支えていくとか、企業を支えていくとか、新たな産業を創造するとか、という理想は全くないのではないかと思います。自分自身のリスクを少なくすることばかりを考え、リスクを負わないけれども自身の収益には貪欲であるのです。リスクを負わないで、儲かる商売なんてあるのでしょうか?自分のお客様の話、考えを理解しようとせず、ひたすら自分自身の都合の良い方向にお客様を誘導しようとする異常な考えはもうやめて欲しいと思います。いまだに、「この投資信託を買ってくれたら融資が通しやすくなるんです」みたいな詐欺まがいのことを言う銀行員がいると聞きました。情けない限りです。実は、ひとりひとりの銀行員はそのことに気付いているのです。そこで、たまに自虐的に「私もそう思うんですが、中々変われないんです。」という人もいます。そうなんです、変われないのです。それは、私も銀行員時代感じました。

少し話が脱線してきましたので、話を元に戻します。さて、結論です。「これから銀行はどうあるべきか?」中小企業が日本の企業数の99.7%である日本経済にとって、銀行の役割は日本経済にとって非常に大きいものです。銀行は、日本の中小企業を支えるんだ、日本経済を支えるんだという気概を持つこと、そして新たな技術、アイデアに敏感になり、自らリスクをとってチャレンジしていく姿勢を持つことが必要です。銀行が自ら産業界より先を行って、産業界をリードして行って欲しいと思います。そのためには、様々な人材を各方面から集めることが必要です。今の銀行は、画一的な人材しかいません。銀行の経営者をいっせいに産業界から求めることが必要であると考えます。社会人になって銀行にしかいなかった人物では、この混沌とした時代では難しいのです。インターネットが発達したこの時代では、変化のスピードが過去とは比べ物にならないほど早くなっています。そのような時代に前時代的な考え方しかできない人物が経営者であると、その会社を潰すことになるでしょう。

私は、金融界と産業界が相互に人材を交流させていき、日本全体にお金がより効率的に回っていくシステムを作っていくことが必要だと考えます。これが私の結論です。銀行界側から産業界に人材を求め、銀行経営を託すことをやって欲しいと思います。そうでないと、何時までたっても銀行は変われないと思います。銀行はもう「ムラ社会」やめましょう。

以上

不動産クラウドファンディング

平成29年法改正により、クラウドファンディングに対応した環境が整備されました。


 クラウドファンディング(Crowdfunding)とは、群衆(Crowd)資金調達(Funding)を組み合わせた造語で、資金を必要とする事業者がインターネットを用いて実現したいプロジェクト等を紹介し、そのプロジェクト等に共感し、賛同した人がインターネットを通じて出資する仕組みのことです。
 クラウドファンディングを利用することにより、事業者は、金融機関から十分な額あるいは満足できる条件での借入ができなかったとしても、事業に賛同した不特定多数の投資家から資金調達を行うことで、事業を実現できる可能性があります。


 電子取引業務を行う不特事業者については、許可又は登録申請の際に「電子取引業務を行う旨」を申請書に記載することが求められ、電子取引業務を適確に遂行するために必要な体制が整備されていることが必要になります。
 なお、既に許可又は登録を受けている不特事業者で電子取引業務を行う者については、変更の許可又は変更の登録を受けることが必要となります。


 書面の電子データ等による提供が可能になったことにより、不特事業においてもクラウドファンディングを利用して投資家から出資を集める事業が増えると期待される一方、詐欺的な行為が行われることに対する懸念もあることを踏まえ、電子情報処理組織をする方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって主務省令で定めるものにより、勧誘の相手方に不特契約の締結の申込をさせることは「電子取引業務」と定義され、一定の規制が設けられています。

 2020年度の「不動産クラウドファンディング」の出資募集額は、85.6億円となり、前年比2.5倍の伸びとなっている。
 

小規模特定共同事業(登録制)

 平成29年法改正により、小規模不動産特定共同事業が創設されました。

主な要件の違い】◇許可制ではなく、登録制◇投資家の一人当たりの出資額及び投資家からの出資総額がそれぞれ原則100万円、1億円を超えないこと◇資本金(小規模第1号事業者:1000万円、小規模第2号業者:1000万円


小規模第1号事業者】 小規模第1号事業者は、不動産賃貸業や不動産売買業等の他業と小規模第1号事業をオンバランスで行う場合が多くなります。そのため、小規模第1号事業者の他業に係る口座と、小規模不特事業で使用する口座を分ける必要があります。なお、複数の小規模不特事業を行う場合には、小規模不特事業ごとに使用する口座を分ける必要があります。


小規模特例事業】 小規模特例事業とは、特別目的会社(SPC)を活用した倒産隔離型スキームです。小規模特例事業の特徴は、事業者の行っている他の事業も含めて同一の会社で行う小規模第1号事業とは異なり、別の会社であるSPCを活用して行うため、事業者本体の経営と分離されている点です。そのため、SPCを活用して行う事業は、事業者本体のバランスシートには計上されない取引(オフバランス)になるため、事業者本体の有利子負債の拡大を避けることができるという利点があります。  
小規模特例事業は、不特契約に基づき行われる現物不動産の取引に係る業務を小規模第2号事業の登録を受けた者(小規模第2事業者)へ委託し、不特契約の締結の代理・媒介に係る業務を、第4号事業者の許可を受けた者(第4号事業者)へ委託することが必要となります。

小規模不動産特定共同事業(登録制)が創設されて、より手軽に不特事業を行うことができるようになりました。
小規模不動産特定事業の登録を受けたい企業様については、当事務所がしっかりとフォローさせて頂きます。
どうぞ、お気軽にお声をかけて下さい。

不動産特定共同事業法

不動産特定共同事業法(不特法)についてお話します。

不動産特定事業法は、出資を募って不動産を売買・賃貸し、その収益を分配する事業を行う事業者について、許可等の制度を実施し、業務の適正な運営の確保と投資家の保護を図ることを目的として、平成6年に制定されました

事業者が自分のバランスシートで行う不動産事業に投資家が参加するための仕組みを、不特法上は、第一号事業と定義しています。

図表1では、匿名組合型の不動産特定共同事業(第一号事業)を念頭に外部負債を借入れ、投資家(事業参加者)から出資を受け入れるスキームです。

投資家保護のために、図表1で第1号事業者は、国土交通大臣等の許可を取得する必要があります。この不動産特定共同事業との関係では、第一号事業に係る不動産特定事業契約の締結の代理・媒介を行う行為を第二号事業と定義し、これも独立した許可の対象になっています。第二事業を行う者を第2号事業者と呼びます。

図表1

平成25年法改正により、倒産隔離型スキーム(特例事業)が導入されました。

図表2の倒産隔離型スキームは、SPCである特例事業者が事業主体となるスキームです。SPCは、他の事業を行うことを目的にしていませんので、投資家は他の事業による倒産リスクを回避できることになります。

特例事業における資金調達の方法は、事業参加者からの出資とノンリコースローンです。金融機関から借入れは、第一号事業では事業金融とならざるを得ませんが、SPCを使うことのできる特例事業では、ノンリコースローンの形態での融資が可能となります。

図表2の特例事業者は、届出が必要です(許可は不要です)。特例事業者から業務の委託を受ける第3号事業者はアセット・マネージャーのような位置づけにあり、不特法上の許可宅建業者であることが前提)が必要です。

また、特例事業では、SPCが投資家募集を直接行うことは想定されておらず、販売会社の位置づけとなる第4号事業者が別途規定された不特法上の許可宅建業者であり、金商法上の第二種金融商品取引業者であることが前提)が必要とされています。

図表2

不特法は、投資家保護を目的としており、その許可を取得するには、色々な必要とする要件をクリアーしなければなりません。

不動産特定共同事業の認可申請は、金融・不動産に強い当事務所にお任せ下さい。

中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」

1.制度の概要
 「経営力向上計画」は、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画で、認定された事業者は、税制や金融の支援等を受けることができます。

 また、計画申請においては、経営革新等支援機関のサポートを受けることが可能です。

2.中小企業等経営強化法に基づく支援措置
(1)税制措置
 認定計画に基づき取得した一定の設備に係る法人税等の特例、認定計画に基づき行った事業承継等に係る登録免許税・不動産取得税の特例、認定改革に基づき行った事業承継等に係る準備金の積立(損金算入)の措置をりようすることができます。

(2)金融支援
 政策金融機関の融資、民間金融機関の融資に対する信用保証、債務保証等の資金調達に関する支援を受けること  ができます。

(3)法的支援
 業法上の許認可の継承の特例、組合の発起人数に関する特例、事業譲渡の際の免責的債務引受に関する特例措置を受けることができます。

3.税制措置
(1)中小企業経営強化税制
 青色申告書を提出する中小企業者等が、指定期間(平成29年4月1日から令和5年3月31日)内に、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき一定の設備を新規取得等して指定事業に供した場合、即時償却又は取得価額の10%(資本金3000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除を選択適用することができます。

(2)事業承継等に係る登録免許税・不動産取得税の特例
 中小企業者等が、適用期間(平成30年7月9日から令和4年3月31日)内に中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、合併、会社分割又は事業譲渡を通じて他の中小企業者等から不動産を含む事業用資産等を取得する場合、不動産の権利移転について生じる登録免許税、不動産取得税の軽減を受けることができます。

(3)中小企業事業再編投資損失準備金
 中小企業者が、適用期間(令和3年8月2日から令和6年3月31日)内に事業承継等事前調査に関する事項が記載された経営力向上計画の認定を受けた場合、当該計画に基づき株式等を取得し、かつ、これを事業年度末まで引き続き有している場合において、株式等の取得価額として計上する金額の一定割合の金額を準備金として積み立てたときは、その積み立てた金額はその事業年度において損金算入できます。
 積み立てた準備金は、帳簿価額の減損等の取崩要件に該当する行為を行った場合は、取り崩して益金に参入され、5年経過後は、その後の5年間にかけて均等額で準備金を取り崩し、益金に参入されます。

4.金融支援
(1)日本政策金融公庫による融資
 経営力向上計画の認定を受けた事業者が行う設備投資に必要な資金について、融資を受けることができます。
「貸付限度額」中小企業事業・・・7億2000万円(うち運転資金2億5000万円)
       国民生活事業・・・7200万円(うち運転資金4800万円)
「貸付期間」 設備資金20年以内、長期運転資金7年以内(据置期間2年以内)

(2)中小企業信用保険法の特例
 特例事業者は、経営力向上計画の実行(※)にあたり、民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等とは別枠での追加保証や保証枠の拡大が受けられます。
(※)新商品・新サービスなど「自社にとって新しい取組」(新事業活動)及びⅯ&A等による事業承継(デューデリジェンスを含む)に限ります。

保証限度額通常枠別枠
普通保険2億円(組合4億円)2億円(組合4億円)
無担保保険8,000万円8,000万円
特別小口保険2,000万円2,000万円
新事業開拓保険2億円→3億円(保証枠の拡大)
海外投資関係保険2億円→3億円(保証枠の拡大)

(3)中小企業投資育成株式会社の特例
 経営力向上計画の認定を受けた場合、通常の投資対象(資本金3億円以下の株式会社)に加えて、資本金額が3億円を超える株式会社(特定事業者)も中小企業投資育成株式会社からの投資を受けることが可能になります。

(4)日本政策金融公庫(中小企業事業)によるスタンドバイ・クレジット
 経営力向上計画の認定を受けた特定事業者(国内親会社)の海外子会社又は海外子会社が、日本公庫の提携する海外金融機関から現地通貨建ての融資を受ける場合に、日本公庫が信用状を発行し、海外での円滑な資金調達を支援します。
「保証限度額」1法人当たり最大4億5000万円
「融資期間} 1年~5年

(5)日本政策金融公庫(中小企業事業)によるクロスボーダーローン
 経営力向上計画の認定を受けた特定事業者(国内親会社)の海外子会社は、経営力向上計画等の実施に必要な設備資金および運転資金について、直接融資を受ける事ができます。

(6)中小企業基盤整備機構による債務保証
 従業員2千人以下の特定事業者等(特定事業者は含まれません)が、経営力向上計画を実施するために必要な資金について、保証額最大25億円(保証割合50%、最大50億円の借入に対応)の債務保証を受けられます。

(7)食品等流通合理化促進機構による債務保証
 食品製造業者等は、経営力向上計画の実行にあたり、民間金融機関から融資を受ける際に信用保証を使えない場合や巨額の資金調達が必要になる場合に、食品等流通合理化促進機構による債務の保証を受けられます。

【特定事業者の定義】
                       従業員数
 製造業その他               500人以下
 卸売業                  400人以下
 小売業・サービス業            300人以下
 政令指定業種               500人以下
 ソフトウエア・情報処理サービス業・旅館業 500人以下


中小企業・零細企業の皆様が、設備投資や会社再編、新規事業を行うタイミングを見て、この経営力向上計画の認定を受けて、色々なメリットを享受してみてはいかがですか?

当事務所は、経営力向上計画をサポートする「認定経営革新等支援機関」です。ご興味をお持ちの企業様はお気軽にご連絡下さい。

中小企業等経営強化法に基づく「先端設備等導入計画」

1.制度の概要
 「先端設備等導入計画」は、中小企業等経営強化法に規定された、中小企業が、設備投資を通じて労働生産性の向上を図るための計画です。

 この計画は、市区町村が国から「導入促進基本計画」の同意を受けている場合に、認定を受けることができます。認定を受けた場合は、税制支援などの支援措置を受けることができます。・・・市町村に確認が必要です。

2.制度利用のポイント
(1)「導入促進基本計画」の同意を受けた市区町村において新たに設備を導入する中小企業者が対象です。
(2)認定経営革新等支援機関に予め計画の確認を受けて市町村に申請する必要があります。
(3)認定された場合、計画実行のための支援措置が受けられます。
  ①税制措置・・・認定計画に基づき取得した一定の設備について、固定資産税の特例措置があります。
  ②金融支援・・・民間金融機関の融資に対する信用保証に関する支援があります。

3.税制措置を受けたい場合
(1)適用対象者の要件(資本金1億円以下など)や手続き等を確認。
(2)税制措置を受けるためには、計画申請時に工業会証明書や認定経営革新等支援機関の確認書等が必要。

4.金融支援を受けたい場合
(1)適用対象者の要件や手続き等を確認。
(2)金融支援を受けるためには、計画申請前に関係機関に相談が必要。
(3)認定経営革新等支援機関の確認書等が必要。

5.「先端設備等導入計画」申請内容
 中小企業が、①一定期間内に、②労働生産性を、③一定程度向上させるため、④先端設備等を導入する計画を策定し、その内容が新たに導入する設備が所在する市区町村の「導入促進基本計画」に合致する場合に認定されます。
(1)一定期間とは?
 3年間、4年間、5年間(市区町村が作成する導入促進基本計画で定めた期間)。
(2)労働生産性とは?
 次の算式によって算定
 (営業利益+人件費+減価償却費)/ 労働投入量(労働者数、又は労働者数×1人当り年間就業時間)。
(3)一定程度向上とは?
 基準年度(直近の事業年度末)比で労働生産性が年平均3%以上向上すること。
(4)先端設備等とは?
 労働生産性の向上に必要な生産、販売活動等の用に直接供される下記設備。
 <対象設備>
  機械装置測定工具及び検査工具器具備品建物附属設備ソフトウエア事業用家屋構築物
(5)計画の記載内容(認定経営革新等支援機関が事前確認を行う)
  ①先端設備等導入の内容・・・事業の内容及び実施時期、労働生産性向上に係る目標
  ②先端設備等の種類及び導入時期・・・機械の種類、名称・型式、設置場所等
  ③先端設備等導入に必要な資金の額及びその調達方法

6.金融支援の概要
 中小企業者は、「先端設備等導入計画」の実行にあたり、民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等とは別枠での追加保証が受けられます。 

 保証限度額



これから設備投資をご検討されていらっしゃる中小企業者様は、是非一度、この「先端設備等導入計画」申請について、お考えになられたらいかがでしょうか?

当事務所は、認定経営革新等支援機関です。本申請についてしっかりとサポートさせて頂きます。ご連絡をお待ちしております。

中小企業等経営強化法に基づく「経営革新計画」

【経営革新計画の概要

◆「中小企業等経営強化法」に基づき、中小企業が自ら策定する新事業計画(経営革新計画)
都道府県が審査し、一定の革新性、経営の向上、実現可能性のある計画を承認するもの。
◆経営革新の定義・・・「事業者が新事業活動を行うことにより、その経営の相当程度の向上を
図ること」

【新事業活動とは?】

1.新商品の開発又は生産
2.新役務(サービス)の開発又は提供
3.商品の新たな生産又は販売の方法の導入
4.役務(サービス)の新たな提供の方式の導入
5.技術に関する研究開発及びその成果の利用
6.その他の新たな事業活動
「新たな取り組み」は個々の中小事業者にとって「新たな事業活動」であれば、既に他社におい
て採用されている技術・方法等を活用する場合でも、原則、承認対象になる。

但し、業種毎に同業の導入状況、地域性の高いものについては同一地域の導入状況につい
て判断し、それぞれについて既に相当程度普及しているものは対象にならない。

【経営の相当程度の向上とは?】

経営革新による経営の相当程度の向上を示す指標として次の2つがあります。
1.付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
2.給与支払総額=給料+賃金+賞与+各種手当
事業年度の最終年(3年ないし5年の期間)において、直近期末の各数値と比較して、以下の
伸び率をともに満たすことが必要。

【審査基準】

1.「新たな取組み」を経営革新の内容としていること。
2.計画の実行によって、「相当程度の経営の向上」が見込まれること。
3.新たな事業活動の「実施方法が適切」なものであること。
4.経営革新計画の事業内容が射幸心をそそる恐れがあること又は公の秩序若しくは善良の
風俗を害することとなる恐れがある業種等、公的な支援を行うことが適切でないと認められる
業種でないこと。
5.経営革新計画が関係法令に違反しないこと又はそのおそれがないこと。
<審査のポイント>
1.新規性(比較優位性)・・・自社の新しい取組み、かつ同業他社比較でも新しい取組み
2.実現可能性・計画性・・・マーケット・販路・資金調達方法等が実現可能性が高いこと

【経営革新計画申請の流れ】

1.新事業計画の策定
2.経営革新計画の申請書作成
3.大阪府経営支援課への申請書の送付
4.大阪府経営支援課での面談、訪問調査(面談は最低2回
5.承認審査会
6.大阪府知事の承認又は不承認
<申請者の要件>
1.大阪府内に本店登記のある中小企業者。個人事業者は住民登録。
2.創業後1年以上の事業実績があること。

【承認後の支援措置】

1.中小企業信用保険法の特例
普通保証等の別枠設定(協会の審査はあります)
金融機関から借入れる承認経営革新事業資金に関し、保証限度額の別枠を設ける。

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2.日本政策公庫による融資制度(国民生活事業、中小企業事業)
「経営革新計画」の事業を行うために必要とする設備資金および運転資金

当事務所では、「経営革新計画」策定の支援を行っています。

新しい取組みをしようとしている中小企業の皆様、ご相談お待ちしています。

大阪信用保証協会 別枠

先日、大阪信用保証協会に、保証協会保証の別枠について詳しくお聞きしました。(保証協会のご担当者様、長電話で申し訳ございませんでした。)

このきっかけは、お客様の「経営革新計画」策定に関わり、大阪府から承認を得たことでした。

承認を得られれば、色々な支援が受けられます。そのひとつに、信用保証の特例というものがあります。これについて保証協会に「特例」とうものはどういうものなのか、コロナ保証とも別なのか? 「経営力向上計画」の中小企業信用保険法の特例との関係はどうなのか等を質問しました。

そして、それらの質問に対する答えをまとめると次のようになります。

1.「経営革新計画」の特例と「経営力向上計画」の特例は別物である。かつコロナ枠とも別である。

2.大阪信用保証協会にはいろいろな保証制度があり、大きく分けると「金融機関経由保証」と「大阪府融資制度保証」の2つのタイプになる。(一覧が大阪信用保証協会のHP 保証制度 | 大阪信用保証協会 (cgc-osaka.jp) にあります。)

3.「経営革新計画」の特例は、大阪府融資制度保証の「チャレンジ応援資金(法認定型)」に対応する。

4.「経営力向上計画」の特例のうち、資金使途が設備資金の場合は、大阪府融資制度保証の「チャレンジ応援資金(設備投資応援資金:計画認定型)」に対応する。

5.「経営力向上計画」の特例のうち、資金使途が運転資金の場合は、金融機関経由保証の「経営力向上関連保証」に対応する。

以上が、経営革新計画、経営力向上計画の保証協会の特例となり、それぞれ80百万円の無担保枠が増えることになります。新規事業参入をお考えで、資金調達が必要である企業様は、「経営革新計画」・「経営力向上計画」を一度ご検討されてはいかがでしょうか。

経営革新計画・経営力向上計画の策定については、当事務所がお手伝いさせて頂きます。ご遠慮なくお問合せ下さいませ。

認定経営革新等支援機関に登録されました。

4月30日の朝8時半ころに「認定経営革新等支援機関に認定されました」と中小企業庁からメールが入りました。瞬間「おおー」と唸ってしまいました。

去年の7月から10月までの理論研修と判定試験、12月24日クリスマスイブの実践研修と判定試験、これを何とかくぐり抜けての認定支援機関への認定、ほっとしました。

これからが、認定支援機関としての本番です。補助金や経営改善計画支援を中小企業の皆様にしっかりとお届けしたいと思っています。

皆様、どうぞ宜しくお願い致します。

知的資産経営について

知的資産経営について

1.知的資産経営とは

(1)知的資産とは?

「知的資産」とは、人材、技術、組織力、顧客とのネットワーク、ブランド等の目に見えない資産のことで、企業の競争力の源泉となるものです。

これは、特許やノウハウなどの「知的財産」だけではなく、組織や人材、ネットワークなどの企業の強みとなる資産を総称する幅広い考え方であることに注意が必要です。

さらに、このような企業に固有の知的資産を認識し、有効に組み合わせて活用していくことを通じて収益につなげる経営を「知的資産経営」と呼びます。

知的財産権、知的財産、知的資産、無形資産の分類イメージ図

知的財産権、知的財産、知的資産、無形資産の分類イメージ図
知的財産権とは「許権、実用新案権、著作権等」
知的財産とは「ブランド、営業秘密、ノウハウ等」
知的資産とは「人的資産、組織力、経営理念、顧客とのネットワーク、技能等」
無形資産とは「借地権、電話加入権等」
「知的資産」とは知的財産権、知的財産、知的資産を指す。

注)上記の無形資産は、貸借対照表上に計上される無形固定資産と同義ではなく、企業が保有する形の無い経営資源全てと捉えている。以上(出典)経済産業省HP

経済産業省のウエブサイトでは、このように企業の強みとなっている目に見えない資産のことを知的資産と呼んでいます。工場や機械は目に見える資産ですが、ノウハウ・ブランド・営業秘密といったものは目に見えません。これらは会社のバランスシートに価値を記載されることがありませんが、実は企業はこのバランスシートに載っていない価値によって、売上をあげ利益を稼ぎ出しているのです。会社にとっては非常に重要なものなのです。しかし、企業はその価値についてしっかりと把握し認識していないことが多々あります。また、金融機関でもその価値について理解し会社の債務者格付けに反映することはやっていないようです。このような状況では、本当の会社の持つ力を十分に活かすこともできずに、ズルズルと目に見えるBSやPL・CF計算書等だけを見て経営を行ったり、融資判断を行っていくことになります。是非、この知的資産経営というものを意識して自社の価値を見直し、金融機関は顧客の格付けに反映させてもらいたいと思います。

(2)知的資産の3分類

知的資産を分類するのにMERITUMプロジェクト(*1)による分類を見てみましょう。

人的資産・・・従業員が退職時に一緒に持ち出す資産(例)イノベーション能力・想像力・ノウハウ・経験・柔軟性・学習能力・モチベーション等

構造資産・・・従業員の退職時に企業内に残留する資産(例)組織の柔軟性・データベース・文化・システム・手続き・文書サービス等

関係資産・・・企業の対外的関係に付随した全ての資産(例)イメージ・顧客ロイヤリティ・顧客満足度・供給業者との関係・金融機関への交渉力等

(*1)MERITUMプロジェクト:ナレッジ型経済の準備を目的として、欧州6か国(スカンジナビア3カ国、デンマーク、フランス、スペイン)と9つの研究機関が30か月(1998年~2001年)に亘って実施したプロジェクト

(3)知的資産の特性

一般に知的資産については次のような3つの特性があると言われています。

①多重利用可能性・・・物的資産や金融資産は用途を特定することで他の用途には利用できず、そこから得られる便益を企業は独占できます。しかし知的資産は多重利用や複製が可能であるため、知的資産に投資することによる便益は独占的にコントロールすることが困難であります。

②投資高リスク性・・・企業の革新や創造活動などの源泉となる組織資産への投資は、物的資産や金融資産に比べて不確実(リスク)であり、経済劇便益が得られる確率が低い。

③市場不存在・・・M&Aや特許の取引などであっても相対の取引であり、そこには明確なマーケットは存在していない。よってその取引について不公正である場合が出てきます。

このように、知的資産については、バランスシートに現れる物的資産や金融資産より、その投資についてリスクが大きくなるとされています。

しかし、それでも茲許、知的資産についての議論が各分野で行われているのは何故でしょうか?

2.知的資産経営の必要性

(1)経済・社会情勢の変化

現在の国民の消費行動は「モノ」から「コト」へ変化してきているとよく言われています。中々モノが売れない時代になってきているようです。スピードの早い情報化社会の中で、人々はパソコン・スマホを利用してインターネットでいつでも繋がっています。そこから情報がどんどん手に入る時代です。モノの比較は手易く出来てしまうのです。人々はモノそのものの便益とともに、より深くそのモノが作られたポリシーや過程等を知りたいという欲求がでて出てきているのではないでしょうか?その領域こそ「知的資産経営」の領域となってくるのです。会社のポリシーや職人の技、製品へのこだわり等の目に見えない価値を消費者は求めるようになってきたからこそ、知的資産という概念が必要とされてきたのではないでしょうか。

(2)デジタルトランスフォーメーション

菅総理大臣の1丁目1番地の政策にデジタル化があります。かなり以前から役所のデジタル化は課題に挙げられ見直ししようという方向性はあったようですが、遅々として進んでいません。このコロナ禍でそのお粗末さが露呈してしまいました。アメリカ・韓国そして中国にまでも遅れてしまっているデジタル化を早急に進めていかなければいけません。

そのデジタル化の過程で、知的資産の考え方が必要なのです。デジタル化というのは、それ自体が収益を稼いでくれるものではありません。事務の効率化や削減などに威力を発揮するものです。つまり、表立って目に見えない理解し難いものなのです。しかし、これを推進しなければ世界各国からどんどん引き離されていきます。目に見えなく便益が理解し辛いという視点は、正しく知的資産経営の本質であります。直接数字には関わらないが、間接的に数字に影響してくるのです。実は現代はこの部分、この考え方が最重要であると思います。

デジタルトランスフォーメーションも知的資産経営も目には見えなく直接的には数字には現れませんが、間違いなくこれからの経営や社会に必要なものであります。

(3)事業性評価融資

金融庁は銀行に対し、担保や保証に頼ることなく、企業の事業性をしっかりと評価して融資することを奨励しています。これはまた、過去の財務諸表だけでなく、企業自体や事業自体の将来性をしっかりと把握しなければならないということです。

しかし、これは銀行だけが事業性評価の責任を取るのではなく、事業会社が自社の事業性をしっかりと「見える化」して銀行に分かりやすく自社の知的資産を説明しなければならないということでもあります。

銀行・企業の両方に、正に「知的資産経営」を理解し推進しなければならない世の中が到来したということに他ならないということです。

では、どのようにして「知的資産経営」を推進していくのでしょうか?

3.「知的資産経営」の推進

知的資産経営の推進を行うためには、まず経営の見える化を行わなければなりません。そのために利用するのが「知的資産経営報告書」や「経営デザインシート」です。ここでは「経営デザインシート」の作成について述べてみます。

(1)経営デザインシートとは?

平成30年5月の知的財産戦略本部 検証・評価・企画委員会 知財のビジネス価値評価検討タス

クフォースが作成している「経営デザインシート」記載要領には次のようにあります。

経営デザインシートは、将来に向けて自社が持続的に成長するために、将来の 経営の基幹となる価値創造メカニズム(資源を組み合わせて企業理念に適合する 価値を創造する一連の仕組み)をデザインして移行させるためのシートである。」

つまり、現在の経営を分析し、その価値層創造メカニズムを見える化し、将来の成長への戦略に繋げて、将来の価値創造メカニズムを表すストーリーになっています。

(2)経営デザインシート基本的構成

経営デザインシートは、「経営デザインシート(全社用)」、「経営デザインシート(事業用)」、「経営デザインシート(事業が1つの企業用)」があります。

各シートとも基本的構成は同じで、上部に基本事項を記載し、左部にこれまでの価値創造メカニズムを、右部にこれからの価値創造メカニズムをそれぞれ記載する。下部に左部から右部に移行させるための戦略について記載するようになっている。価値創造メカニズムは、両端に資源と価値を配置し、その間に資源を価値に変える仕組みを配置する形で表現されています。

全社用と事業用との大きな違いは、価値創造メカニズムにおける資源を価値に変える仕組みをどの様に捉えるかです。全社用では事業が複数存在することを前提に各事業の相関関係等を記載し、事業用ではビジネスモデル自体を記載します。

全社用、事業用、事業が1つの企業用ともに、その作成目的等に応じて全ての欄に記載する必

要はないということです。

出典:内閣府ホームページ 知的財産戦略本部「経営デザインシートの雛型」

(3)記載要領

典型的な記載の順番を以下に示しますが、これに限られるものではありません。

①自社の目的・特長、経営方針

②「これまで」の価値創造メカニズム・・・価値・事業ポートフォリオ・主要な資源・これまでの外部環境・全社課題(弱み)

③「これから」の姿への移行のための戦略(1)・・・これからの外部環境

④「これから」の価値創造メカニズム・・・価値(提供する価値、提供先から得るもの)・事業ポートフォリオ・主要な資源

⑤「これから」の姿への移行のための戦略(2)・・・移行のための課題・移行に必要な資源・解決策

4.最後に

知的資産経営は、今後の中小企業の経営にとって必須の考え方になってくると思います。この考え方を早く取り組んで自社のものにする必要があります。そのために、経営デザインシートや知的資産経営報告書を実際に作成してみて、書面で表していくことが必要です。事業性評価融資も益々増加していくでしょうし、書面で自社の価値創造の仕組みを説明することが求められるのです。そして、この経営や融資の考え方は、今後「ニューノーマル」として捉えられていくでしょう。